「次の会議、数字を使って説明してもらえる?」 そう言われてPCを開き、Excelを起動した。集めた数字は並んでいる。 でも何から手をつければいいか分からなくて、ただ画面を見つめてしまった ——そういう経験、あったりしないでしょうか。 分析の知識がないわけじゃない。 やる気がないわけでもない。でも手が動かない。 この記事では、そんなときに最初にすることを一つだけ紹介します。 統計の知識は必要ありません。 特別なツールも必要ありません。
この記事は、実務での見落としを防ぐ視点を提供します。統計学的な正確性の保証ではなく、分析結果を使う際のリスクを洗い出すことを目的としています。
手が止まる原因は、多くの場合「何から始めたらいいかわからないから」ではないでしょうか。
ここでは、よくある間違った仕事の始め方のパターンを3つ紹介しようと思います。
一つ目は、「とりあえずExcelを開いてグラフを作り始める」パターンです。
折れ線グラフを出してみる。棒グラフも試してみる。割と時間をかけて出来上がったグラフを眺めても、
「これで何が言えるんだろう」という感覚が拭えない。
グラフは作れているのに、報告の言葉が出てこないんですよね。
それはグラフの作り方の問題ではなくて、
「何を解きたいのか」が決まっていないまま手が動いているからです。
二つ目は、「統計知識がないから分析できない」という思い込みです。
確かに高度な分析には多くの専門知識が必要ですが、
上司に「数字で説明して」と言われたときに求められているのは、ほとんどの場合そこではありません。
「感覚ではなく数字で話してほしい」「根拠を見せてほしい」というのが本音のことが多い。
検定や有意差の話より前に、「問いを立てて数字で答える」という構造が求められているんです。
三つ目は、最近増えているパターンです。「ChatGPTにデータを渡して分析してください、と言えばいい」
と聞いて試してみたら、良い回答が返ってきた。でも結局、何を上司に話せばいいのか分からなかった——というケースです。
AIへの丸投げは、問いが決まっていないと機能しないんです。
つまり、手が止まる本当の理由は一つです。
「何をしたいか」が決まっていない。
それだけです。
「データで説明して」と言われたとき、最初にすることはExcelを開くことでも、
グラフを作ることでも、AIにデータを渡すことでもありません。
ノートかメモアプリに、問いを1行で書く。
それだけです。
問いというのは「〇〇は、〇〇より〇〇か?」という形の文です。比較・変化・差異を問うものであれば何でも構いません。
上司が「データで説明して」と言ったとき、その前後に必ずヒントがあります。
この言葉の中にすでに問いが含まれています。それを「〇〇か?」の形に変換するだけです。
上司の発言 | 問いに変換すると |
|---|---|
「若い世代の反応がいい気がする」 | 「20代の購入率は他の年代より高いか?」 |
「先月の施策、効いてる?」 | 「施策前後で転換率に変化はあったか?」 |
「なぜこの商品が売れない?」 | 「この商品のみ他より下がっている指標はあるか?」 |
どれも数字を調べれば答えられます。統計の知識より先に、「問いの言語化」があります。
問いになっていない例と、問いになっている例を並べてみます。
問いになっていない(NG)
これらは作業の説明であって、問いではありません。問いがないまま手を動かすと、
出来上がっても「で、何が言いたいの?」と返ってくることになりやすいんですよね。
問いになっている(OK)
これなら数字を調べれば「はい」か「いいえ」か、ある程度の答えが出ます。
問いを1行書くだけで、何を調べればいいかが見えてきます。逆に言うと、
問いが書けないうちは、何を調べても「で、何が言えるの?」という状態から抜け出せないんです。
問いが1行書けたら、次はAI(ChatGPTやClaudeなど)に渡します。
ExcelのデータをCSV形式で保存するか、セルをそのままコピーしてAIのチャット画面に貼り付けます。
全部のデータでなくて構いません。問いに関係する列だけを選んで渡すと、AIの回答が絞られて読みやすくなります。
(企業にお勤めの方、事業のデータをAIに与える際は、学習に利用されないことが確約されているモデルを扱ってる場合のみにしてくださいね)
貼り付けるときに一言添えましょう。
「このデータは、先月1ヶ月分の商品別売上記録です。A列が日付、B列が商品名、C列が売上金額です。」
「何のデータか」をひとことで伝えるだけで、回答の精度が変わってきます。
「分析してください」ではなく、書いておいた問いをそのまま貼り付けます。
「先月と今月で、商品Aの売上金額に差はありますか?数字で教えてください。」
「差はありますか?」という形で問うと、AIも答えやすくなります。
「分析してください」だと、AIが自分なりに何を出すか決めてしまうので、
返ってくる内容が問いとずれることがあるんですよね。
AIが回答を出してくれます。長い文章が返ってくることもありますが、全部使う必要はありません。
最初に上司に伝える一文を選ぶとしたら、どれか。そこだけを決めて会議に臨みます。
例えば、AIが「商品Aの先月の売上は120万円、今月は95万円で、前月比で20.8%の減少です」
と返してきたとしたら、それが上司への報告の核になります。
「商品Aは今月、先月比で約21%落ちています。この要因を確認したいと思っています。」
これだけで「データで説明できている」状態になります。
(流石にこの例は簡単すぎますね、今回は本題とズレるのでシンプルにしています)
実際にやってみると、ここで止まりやすいというポイントがあります。
上司の発言をそのまま使いましょう。「気になる」「確認したい」「なんで?」という言葉が出た場所に、
問いが隠れています。会議の前後、日報のコメント、Slackのメッセージ——上司が口にした言葉を手がかりにしてみてください。
それでも浮かばないときは、「現状と比較」という形で考えると見つかりやすいことがあります。
「今月は先月より変わったか?」「このグループと他のグループで違うか?」という構造です。
AIが専門用語を使った回答を出してきた場合は、続けてこう聞いてみてください。
「もう少し分かりやすく説明してください。上司への報告文として使いたいので、
数字を含む1〜2文で教えてください。」
AIは言い直しの依頼に対応します。「分からない」と感じたら、
分かりやすくしてもらうようお願いするだけでいいんです。
最初はシンプルな列だけで大丈夫です。「日付」「商品名」「売上金額」の3列だけを選んで渡す、
というやり方から始めてみてください。全データを一気に渡そうとすると、AIの回答が散漫になりやすく、
何を答えてもらったか分かりにくくなることがあります。
「データで説明して」と言われたときに確認することを3つに絞りました。
チェックポイント
分析の最初の一歩は、計算でも統計でもありません。問いを1行書くことです。それさえあれば、AIが次のステップを手伝ってくれます。
分析結果の見方や統計用語の解釈に困ったときは、StatNaviの逆引き辞典が参考になるかもしれません。
「p値が出た」「相関係数が出た」という状況を入口に、上司への報告文まで確認できます。
次に困ったとき、すぐに答えが見つかるように
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